[ 職種別 ]運送業・配送業
トラック運転手などの運送ドライバーや配送・宅配ドライバーの人材不足は非情に深刻で、労働基準監督署からの調査や是正勧告が出されるほど、違法な長時間・過重労働が常態化しています。
国土交通省や厚生労働省者による、長時間労働の抑制に向けた取り組みがなされている一方で、運送会社の中には、「固定残業代制」や「事業場外労働でのみなし労働時間制」を悪用し、残業代が支払わないというケースが増えています。
トラック運転手などは労働時間の算定が難しいと言われることもありますが、証拠となりうるものを揃え、しっかりと立証できれば、残業代を請求することができます。
- 「待機時間は休憩時間、積荷時間は労働時間に入っていない」
- 「固定残業代制だから、残業代は含まれている」と言われている
- 「事業場外労働だから、残業代は含まれている」と言われている
- 「歩合制だから、残業代は出ない」と言われている
証拠となりうるもの
- デジタルタコグラフ※
- 日報・週報
- 運行記録と時間
- 手帳やメモなどへの詳細な記録
- 配車表
- アルコール検知記録など
※デジタルタコグラフは、証拠を残さないように、強制的にオフにされたのであれば、詳細に記録をとっておきます。)
裁判例
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大阪地裁平成28年12月16日 LLI/DB 判例秘書登載
本件は、被告でトラック運転手として稼働していた原告が、未払の時間外割増賃金及び付加金を請求したのに対し、被告が、原告との労働契約は時間外割増賃金を含んだ歩合制を内容とするものであり、未払の時間外割増賃金は存在しないとして争った事案である。
裁判所は被告が争っている事項について、被告と原告の間で作成された労働条件通知書を見ると、被告の主張する客観的事情はないと判断し、原告の請求を認めた。 -
名古屋地裁平成28年3月30日 LLI/DB 判例秘書登載
長距離トラックの運転手であった原告が、労働基準法37条に基づく割増賃金等の支払を求めた事案であり、所定のトラック運転手に対してその業務が所定労働時間内か否かに関わらず走行距離に応じて支払われる長距離手当を割増賃金の支払いに当てる旨の就業規則の規定があり、これに基づいて長距離手当の支給によって割増賃金が支払われたといえるかが争点となった。
裁判所は長距離手当が割増賃金に該当するか否かは、当該支給が労働基準法37条の例示に該当しないとしても、①割増賃金としての実質を有し、②割増賃金としての実質を有する部分とそれ以外が判別でき、割増賃金の額を下回らないことが労働者側で判断しうるか否かによって判断すべきとした。そして本件においては、長距離手当が通常の法定労働時間の労働に対する対価も含み、特別な労働時間に対する時間の比例性という性質がないことから割増賃金としての実質を有しないことから①を満たさないとして原告の請求が認められた。