労働問題のよくある質問

残業代請求や未払い賃金請求のよくある質問

私の場合、残業代を請求することができますか?

法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて労働した場合、時間外労働となりますので、残業代を請求することができます。
残業代を請求することは、労働者の正当な権利ですので、あきらめず1日も早く弁護士へご相談ください。

時間外労働とは?

法定労働時間(原則1日8時間かつ1週40時間)を超える労働を言います。

時間外労働や休日労働をした場合の割増率を教えてください。

時間外労働や休日労働をした場合、労働時間等に応じて、基礎賃金に対して割増率25%以上50%以下の残業代(割増賃金)が支払われなければならないと法律で定められています。(労働基準法37条1項)

労働基準法37条1項
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で、それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

時間外労働割増率25%以上深夜労働割増率25%以上休日労働割増率35%以上1ヶ月60時間を超える時間外労働割増率50%以上※
※大企業に限定。中小企業は25%(2017年4月現在)

退職後でも残業代を請求することはできますか?

退職後でも残業代を請求することができます。
ただし、残業代請求権には時効があり、給料日から3年間と定められています。そのため、原則として請求できる期間は最大で3年分となります。※
退職を決意されたら、または退職日までの有給休暇中など、退職後すぐに残業代を請求できるよう、1日でも早く弁護士へご相談ください。
※2020年4月1日以降に支払われる賃金については、時効期間が2年から3年に変更されました。

残業代を請求するために必要な証拠を教えてください。

残業代を請求する場合に証拠となりうるものの一例をご紹介します。

給与明細業務報告書(就労時間の記載があるもの)タイムカードパソコンのログ履歴IDカード(出退社記録など)メールの送受信履歴パソコン上の勤怠データメモ・日記・手帳業務日誌デジタルタコグラフ(タコメーター)勤怠報告書配車表公共交通機関共通乗車カード(Suica・PASUMOなど)期券の乗車履歴
※原本の取得が難しい場合は、コピーでも構いません。また、上記に限らず、「同僚の証言」などが証拠として認められたケースもありますので、1日も早く弁護士にご相談ください。

家族手当や住宅手当などは、残業代を算出する際の基礎となりますか?

家族手当や住宅手当などは、残業代を算出する際の基礎としません(労働基準法第37条第5項、労働基準法規則第21条)。これ以外にも、通勤手当・別居手当・子女教育手当・臨時に支払われた賃金・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は残業代算出の基礎にしません。
残業代の算定に当たっては、労働時間の記録を基礎に行います。
しかしながら、名目は、家族手当であるものの、実質的には、賃金として支払われていたケースもありますので、注意が必要です。

休日労動について教えてください。

休日について、労動基準法第35条により、会社(使用者)は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないと定められていますが、4週を通じて、4日以上の休日を与える使用者については適用しないとされています。

タイムカードなどの残業を証明できる資料がありません。

残業時間を割り出すことができれば残業代を請求することができます。

以下は、証拠になりうるものの一例です。

タイムカード
パソコンのログイン・ログアウト時間
メールの送受信履歴
ラインなどの連絡ツールによる日常的な連絡
業務日誌や手帳等のメモ書き
タクシーなどの交通機関に関する領収書
任意の交渉であれば、しっかりとした証拠がそろっていなくても、譲歩を含め和解できる場合もありますが、裁判では証拠が重視されるので、思いつく限り、些細なものであっても、あきらめずに証拠を集めましょう。

タイムカードが直近の1ヶ月分しかありません。

タイムカードなどの勤怠記録が直近1ヶ月分しかなかったとしても、残業代を請求することができます。なぜなら、季節要因が大きく影響する仕事など、繁忙期と閑散期でよほどの差がない限り、他の月でも同じくらいの仕事をしていたと推定されるからです。また、変形労働時間制が採用されている場合であっても、労働時間が週40時間を超えていれば、時間外労働となりますので、残業代を請求することができます。

また、タイムカードで勤怠管理をされていたのであれば、会社(使用者)はタイムカードを労働者が退職してから3年間は保管しなければならいと法律で定められていますので、会社(使用者)にタイムカードなどの記録の開示を求めることができます。ただし、任意で交渉の段階では、会社(使用者)が資料開示請求に応じない可能性もあります。

勤務時間と場所を書き込んだ手帳とメモしか持っていません。

勤務時間などを書き込んだ手帳やメモを根拠に残業時間を算定することができますので、手書きのメモであっても、証拠となります。

ただし、タイムカードのような客観性の高い証拠より、証拠としての価値が劣ることは事実ですので、会社(使用者)が、争ってきた場合には,メモ以外の様々な資料からメモの記載を裏付けていく必要があります。

タイムカードで勤怠管理をしていました。会社にタイムカードの開示してもらうことはできますか?

弁護士に委任することで、訴訟などの法的手続を通じて会社(使用者)に証拠の開示を求めることができます。

タイムカードは、残業時間の算定に関して強力な証拠となりますので、手元にタイムカードがない場合には、弁護士から会社(使用者)に対してタイムカードの開示を請求します。

会社(使用者)が、開示請求を拒否した場合には、民事訴訟などの法的手続において、タイムカードの開示を請求していきます。また、タイムカードの提出を、裁判所から会社(使用者)に正式な命令をするように請求することもできます。

会社(使用者)によるタイムカードの改ざんや破棄の恐れがあれば、裁判(訴訟)を提訴する前であっても、裁判所を使って証拠保全の手続をとることができる場合もあります。

すでに退職してしまい、手元に証拠がありません。残業代を請求することはできないのでしょうか?

退職後でも残業代を請求することができます。
ただし、残業代を請求するには、労働者側が残業時間を、立証する必要があります。
すでに退職をしてしまい、手元に証拠がない場合には、会社(使用者)に対して、資料開示請求を行い、就業規則や賃金台帳、タイムカードなどの資料の開示を求めます。
会社(使用者)には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があり、労働時間を確認・記録すべきとされています。そして会社(使用者)は、労働関係に関する重要な書類を3年間保存する義務があります。
会社(使用者)が上記書類の開示を拒否する合理的な理由はありませんので、ほとんどの場合、弁護士が会社(使用者)と交渉する段階で、資料の開示がなされます。

裁判例(大阪地判平成22年7月15日労判1014号)
使用者は、労働契約上の付随義務として、労働者にタイムカードを適正に打刻させ、労働者からタイムカードの開示を求められた場合には特段の事情がない限り保存しているタイムカードを開示すべき義務を負う。

会社から「うちは固定残業制(みなし残業制)で残業代は最初から含まれているから」と言われました。それ以上に働いている場合、残業代を請求することはできますか?

固定残業制(みなし残業制)とは、休日労働や深夜労働の一定時間分を固定残業代として支払う制度です。固定残業制(みなし残業制)という理由で、いくらでも残業していいということではありません。会社(使用者)は、固定残業時間(みなし残業時間)を超える時間外労働や休日労働、深夜労働について割増賃金を追加で支払う義務があります。

よって、残業代を請求することができます。

営業職をしています。外回りが多く、社外では携帯電話やモバイル端末で上司からの指示を受けながら働いています。私の場合、みなし労働時間制が採用されるのでしょうか?

みなし制の適用要件の一つに、「労働時間を算定しがたいこと」があります。
労働時間を算定しがたいかどうかは、会社(使用者)の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されますが、携帯電話などにより随時、会社(使用者)の指示を受ける場合は、この要件を充たさないとされています。
したがって、本件のケースでは、右要件を満たさないため、みなし労働時間制が適用されません。

午前中は自宅から取引先(営業先)に直行し、午後4時以降に帰社後、内勤業務を行うことがほとんどですが、私の場合、みなし労働時間制が採用されるのでしょうか?

午後4時までは所定時間労働したものとみなされ、それ以後は実労働時間で計算して、両者の合計を1日の労働時間とされます。よって、残業代は請求できます。

※みなし制の適用要件

第一の要件:事業場の外で労働がなされること。
労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます(昭63.3.14基発150号)。

第二の要件:労働時間を算定しがたいこと。
労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。

みなし制により処理を行う場合は、所定労働時間によるのが原則ですが、業務を行うのに所定時間を越えて労働することが通常必要である場合には、その通常必要な時間につき、みなしが行われます。
「通常必要な」時間は、判断が難しいため、過半数組合、組合がない場合は過半数代表者との労使協定により「通常必要な」時間を定めることができます。
例えば、その業務を遂行するために、「通常5時間かかる」と考えられる場合は、所定労働時間の3時間でみなすのではなく、5時間働いたとみなさなくてはならないということです。
ただし、当該業務の遂行に通常必要とされる時間は時とともに変化することが考えられるので、協定には有効期間の定めをしなければなりません(労働基準法施行規則24条の2第2項)。また、この協定は届出が必要です(労基法38条の2第3項)。

「君は管理職だから、残業代は出ないよ」と言われました。

厚生労働省は「肩書きを盾に安い賃金で長時間労働を強いることがあってはならない」と通達を出しています。
これは、会社(使用者)が、「管理職」という肩書きを与えることによって残業代の支払いを免れようとする所謂「名ばかり管理職」問題に対するものです。

「店長」や「課長」などの肩書きだけではなく、管理職(管理監督者)として、実質的な要素を考慮して判断されるべきとされています。

管理職(管理監督者)にあたるか否かの判断要素

職務内容
決裁権、人事権、採用権など経営者と一体的な立場か
自己の勤務時間に対する裁量権
役職手当など賃金などの待遇
なお、管理職(管理監督者)であっても、深夜労働については割増賃金を支払わなければなりませんので、この部分については管理職(管理監督者)であっても、残業代を請求することができます。

取引先との商談や接待などで帰宅が深夜になることが多いです。営業手当はもらっていますが、残業代は支払われたことがありません。私の場合、残業代を請求することはできますか?

営業職に「営業手当(みなし手当)」が支払われていることが多く見受けられます。本来、時間外労働時間や深夜労働時間に応じた割増料金が支払わなければなりませんが、これを固定制にして、給与に含めるのが営業手当(みなし手当)としています。

営業手当(みなし手当)が、実際の割増賃金に相当していれば問題ありませんが、時間外労働がみなし手当に対応する残業時間を超えている場合には、それについて残業代を請求することができます。

会社から「残業した場合も残業代を受領しない」と、覚書のようなものを書かされました。私は残業代を請求することができないのでしょうか?

残業代を請求することができます。たとえ、会社(使用者)と労働者との合意の上であっても、会社(使用者)は労働者に対して、残業代(割増賃金)を支払わなければなりません。

止むを得ず、残業をするしかありませんでした。上司の承認を得ずに行った残業に対して、残業代は請求できますか?

裁判例(大阪地判平成18年10月6日)では、残業代の請求権は失われないとされています。

裁判例(大阪地判平成18年10月6日):
就業規則に、事前の所属長の承認を得て就労した場合の就業についてのみ時間外労働とする定めがあっても、こうした規定は、不当な時間外手当が支給されないようにするための工夫を定めたものにすぎず、所属長の承認なしの時間外労働の賃金請求権は失わない。

ただし、この判断が妥当するか否かは、業務の性質などそれぞれの事情によるところが実際です。ご不安であれば、弁護士へご相談されることをおすすめします。

会社の経営が思わしくないと聞きました。このような経営状況でも残業代を請求することはできますか?

残業代請求は、労働者の正当な権利です。会社の経営状況によるところもありますが、未払いの残業代をしっかり取り戻せるように、できるだけ早く、弁護士にご相談されることをおすすめします。

未払いの残業代を自分で計算することはできますか?

未払いの残業代を自分で計算することはできますが、必要な資料が不足している場合は、正確な残業代を計算することは難しいでしょう。

インターネットで無料提供されているシミュレーションツールなどで概算を把握したら、弁護士に委任して、正確な残業代を算出した上で、残業代請求をされることをおすすめします。

「残業申請(命令)は30分単位だから」と言われました。

毎日の残業時間(時間外労働時間数)は本来1分単位で計算されるべきものです。四捨五入や切り捨ては認められません。そのため、残業時間の端数処理で15分や30分単位で残業時間を切り捨てることは違法となります。

ただし、1ヶ月の時間外労働、 休日労働、 および深夜労働時間数の合計に、 1時間未満の端数がある場合は、「1時間単位でする便宜的事務処理」として、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げることが例外として認められています。

在職中(就業中)の会社に、残業代を請求することはできますか?

在職中(就業中)の会社に、残業代を請求することはできます。退職後よりも、在職中(就業中)のほうが残業代の請求に必要な証拠を集めやすいでしょう。残業代の請求は、労働者の正当な権利ですので、あきらめずにご相談ください。

しかしながら、就業中に残業代請求を行うことで、会社との関係性を心配される方もいらっしゃいますし、退職後の方が、遠慮なく会社に残業代を請求できるという方もいらっしゃいます。

残業代請求の時効は、3年間とされているため、退職日からすぐに請求を行いたいということで、「会社を退職することが決まったとき」、「最終出勤日から退職日までの有給休暇消化中」などにご相談にいらっしゃる方がほとんどです。※

2020年4月1日以降に支払われる賃金については、時効期間が2年から3年に変更されました。
ただし、2020年4月1日より前に発生した賃金については、時効期間が2年のままとなりますのでお早めにご相談ください。

「就業時間1時間前に出社するように」と、会社から言われています。

就業規則や契約内容によりますが、給料にその時間が含まれていないのであれば、会社はその時間について給料を支払わなければなりません。

違法の可能性があり、残業代を請求することができます。

残業代請求をしていることを就職活動先や転職先に知られたくありません。

残業代請求は、弁護士と前職在籍の会社との間で、交渉や裁判をすることになりますので、転職先に知られることはほとんどないでしょう。

一方で、前職在籍の会社へ、在籍中の勤務態度や勤務状況について問い合わせをする企業は、それほど多くはないものの実際にあるようです。しかしながら、人事は守秘義務が道義的にありますので、残業代請求をしていることが、就職活動先や転職先に知られる可能性はほとんどないでしょう。

ご心配であれば、かつての同僚や関係者にはできるだけ転職先を教えないようにするなど予防的対策をとっていただくとよろしいでしょう。

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